家電量販店のイヤホン売り場に立つと、20社近いメーカーが横一列に並んでいます。どれも良さそうに見えて、結局いちばん安いものを手に取って帰る、という買い方になりがちです。
メーカー選びは、音の好みから入ると決まりません。先に決まるのは予算と、いま使っているスマホのほうです。ここでは絞る順番と、メーカーごとの音の傾向、買う前に見ておく3か所を並べます。
おすすめのメーカーを20社ぶん覚える必要はありません。売り場に立つ前に候補が3社まで減っていれば、あとは実物を耳に当てるだけで決まります。
まず予算とスマホでメーカーを絞る

メーカーの候補は、予算とスマホの種類だけで半分に減らせます。音の好みを考えるのは、そのあとで十分です。
2万円を超える価格帯では、ソニー、ボーズ、テクニクス、ゼンハイザーあたりが並びます。1万円前後ならオーディオテクニカ、JBL、ビクター、AVIOT。5千円前後まで下げると、AnkerとEarFunがほぼ二強です。
iPhoneならコーデックより装着感
iPhoneはBluetoothの音声でAACとSBCが中心です。ソニーのLDACやaptX系には基本的に対応していません。
ヤマダデンキの記事では、LDAC対応を理由に選んでもiPhoneでは性能を出せない、と説明されています。iPhoneを使っているなら、AACでの音の作り込みと、耳に合うかどうかを先に見たほうが得です。
AndroidならLDAC対応が効く
Androidで音を優先したいなら、LDACに対応したモデルが候補になります。LDACは96kHz・24ビットの信号を最大990kbpsで送れる方式で、ソニーが開発しました。
ただし、スマホ側もLDACに対応している必要があります。設定の開発者向けオプションで、いま何の方式で接続しているか確かめられる機種もあります。

iPhoneなのにハイレゾ対応で選んでいました。あれは意味がなかったんですね。
メーカーごとの音の傾向を一覧で見る

同じ価格帯でも、メーカーごとに音の作り方がはっきり違います。オーディオ専門店のフジヤエービックや、ビックカメラ、ジョーシンの案内から、傾向が一致している部分をまとめました。
| メーカー | 音の傾向 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ソニー | デジタル処理による臨場感と空間表現 | 機能もまとめて欲しい人 |
| オーディオテクニカ | 癖のない中高音と、ちょうどよい低音 | 長く聴いても疲れたくない人 |
| テクニクス | 低域から高域までの分離がよく解像度が高い | 楽器の音を細かく聴きたい人 |
| JBL | スピーカー技術を生かしたパワフルな鳴り | 低音で気分を上げたい人 |
| ボーズ | 静けさと音の厚みの両立。価格は高め | 音に集中したい人 |
| ビクター | 落ち着いた低音と繊細な高音 | アコースティックを聴く人 |
| AVIOT | 日本人が聴きやすい音に寄せた調整 | 邦楽をよく聴く人 |
老舗が多いのも、この分野の特色です。オーディオテクニカは1962年に東京都新宿区で生まれ、ビクターは1927年設立の日本ビクター蓄音器株式会社が始まりです。ゼンハイザーは1945年創立のドイツのメーカーで、テクニクスはパナソニックのオーディオブランドにあたります。
1万円以下ならAnkerとEarFunが強い
予算が1万円までなら、AnkerとEarFunを最初に見るのが早道です。この価格帯は、音の差より機能の差のほうが大きく出ます。
ビックカメラの案内では、Ankerは価格に対して機能が多く、オープンイヤー型の種類も増えていると説明されています。初めて完全ワイヤレスを買う人にすすめられているのもこのあたりです。
EarFunは2018年に中国の深センで生まれたブランドです。ノイズキャンセリングや防水など、実用の部分を優先した作りだと紹介されています。
日本のメーカーにこだわるなら、ヤマハのTW-E3Cのように1万円以下でaptXとマルチポイントに対応したモデルもあります。原音に近い音を安く試したい人に向いています。
日本メーカーと日本製は同じではない
ここは誤解が多いところです。日本メーカーの製品と、日本国内で作られた製品は別ものです。ヤマダデンキの記事では、ソニーやオーディオテクニカのような大手も、設計と音の調整は日本で、量産は中国やベトナムの工場に委託していると説明されています。
国内で組み立てまで終えた製品を探すなら、箱の「Made in Japan」の表記を見ます。表記がなければ、設計国と製造国が違うと考えて差し支えありません。
もう1つ、技適マークの話も出ています。無名ブランドの中には、このマークが付いていない製品が混ざっていることがあるそうです。マークの有無は、製品ページや本体の刻印で確かめられます。

国産だと思って買っていたものが、実は海外の工場だったということですね。
ノイズキャンセリングで選ぶならソニーかボーズ
静けさを最優先にするなら、ソニーとボーズの2社に絞って構いません。この2社は、ノイズキャンセリングを長く作り続けてきた分だけ蓄積が違います。
ソニーは2008年に世界初のデジタルノイズキャンセリングヘッドホンとしてMDR-NC500Dを出しました。そこから今のワイヤレスまで、技術を伸ばし続けています。
ボーズは価格が高めですが、そのぶん静けさに振った作りだと案内されています。オープンイヤー型も出しているので、耳をふさぎたくない人にも選択肢があります。
電車やバスで使うなら、この機能は音量を上げすぎない助けにもなります。まわりの騒音が下がるぶん、小さい音量でも聴き取れるからです。
試聴なしで決めるなら3つだけ確認
店頭で試せないときは、製品ページで次の3か所を見ます。音の評価はあとにして、まずこの3つで候補を落とします。
1つ目はBluetoothのバージョンです。ビックカメラもe☆イヤホンも、5.1以上を目安に挙げています。音飛びや遅延が起きにくくなります。
2つ目は再生時間です。e☆イヤホンでは、本体だけで5時間以上あれば出張や作業中に困りにくいとされています。ケース込みの時間と分けて書かれているので、混同しないようにします。
3つ目は装着方式です。カナル型は遮音性が高く音漏れしにくい代わりに、長時間だと圧迫感が出ます。インナーイヤー型やオープンイヤー型は楽ですが、外の音が入ります。
アプリの出来も見ておきたいところです。ソニーやテクニクスのように、タップの割り当てや音の調整をアプリで変えられるメーカーがあります。買ったあとに操作を変えられるかどうかで、使い勝手はだいぶ変わります。
修理や問い合わせの窓口が国内にあるかどうかも、長く使うなら効いてきます。国内メーカーはこの点で有利ですが、同じ価格帯の海外ブランドより高くなりがちです。どちらを取るかは、使う年数で決めてください。
耳に合わないときは、イヤーピースの交換で変わることもあります。サイズを1つ変えるだけで、低音の出方も装着感も変わります。買ったあとに合わないと感じたら、返品より先にここを試してみてください。

予算とスマホで絞ってから売り場に行けば、迷う時間がぐっと減りそうです。
溝口ゆういち多くの製品をレビューしてきたガジェットライター。資格勉強にiPad+互換ペンを愛用しています。販売店などからリサーチして最新の情報をお伝えするように努力しています。


